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第17章 郷土料理

渓口の千層餅

渓口の千層餅は、寧波市奉化県渓口鎮の特産菓子である。外形は四方、内は27枚に分け、金色で緑を透かし、バリバリに焼き上げられた芳しい千層餅がたまらない美味しさで、いくら食べても飽きない。

渓口千層餅の歴史は百年以上あった。光緒八年(1882年)に、渓口鎮の王毛竜氏が王永順餅店を開き、1886 年から餅を作り始めたそうである。ある日、弟子の毛化竜が餅に奉化産の海苔を入れ、出来上がった餅は以外にすがすがしい香がし、顧客に好かれた。その時から、海苔を添加物とし、「毛竜千層餅」と呼ばれる餅を作り始めた。これまで百年来、それを代々受け継ぎ、丁寧に製作してきたから、商売繁盛で、名を馳せた。

渓口千層餅の製作は、材料にこだわる。上等な小麦粉、油、砂糖及び奉化産の品質優良な海苔を原料に、蒸し、餡作り、層作り、焼き、包装などを通して作られたものである。厚さは1.5センチの間に、27枚を重ねるから、歯ざわりがよく、芳しく、魅力的な菓子である。

渓口千層餅は郷土料理として、観光客、或いは贈り物のお土産として、特に海外の寧波人に故郷の味として親しまれる。

竜鳳団子

竜鳳団子は、浙江省東部地域の名物料理で、また寧波市の十大名物料理の一つである。作り方が優れている。人々に好かれる安くて美味しい団子である。古くから多くの団子屋があったが、趙大有の竜鳳団子が最も有名で、「趙大有団子」と呼ばれる。

竜鳳団子は寧波の伝統名物として、その歴史は少なくとも南宋まで遡ることができる。民間では、次のような伝説がある。

南宋の康王趙構が、臨安に都を定めた後、金国の兵隊が長江を渡り、臨安に迫った。趙構が大臣と后妃などを連れて明州(寧波)に避難したが、一行は逃げて散り散りとなった。急難の際、鄞県農村の娘が金国の兵隊を騙して撤退させた。救助された康王が、我慢ができないほど腹が減り、村の娘に食を求めた。康王がもち米の団子をもらい、それを食べた後娘と別れた。臨安に戻った康王は、その娘の結婚式に、皇帝の車を使わせることを許した。そして、皇帝が食べたもち米の団子を「竜鳳金団」と封じた。

趙大有金団は、最初は上虞の趙氏によって作られた団子であった。その作り方は、もち米2キロに3キロのうるち米、4~10時間漬け、洗浄、磨く。餡子は750グラムのささげ或いは大豆に1キロの砂糖、炒め、更に適量の蜜柑、瓜、オレンジ、桂の花などを入れる。このように、上等な材料を使い、綿密に製作、安く売り、広く販売されているから、趙大有の店は早く人気を集めた。その後、一部の商人が利益のため、趙大有の商号を無断に使い始めた。例えば寧波市内には、江東大戴家弄口の趙大有徳記、開明街の趙大有園記、西門口の趙大有莫記、鼓楼前の趙大有信記、開明街の趙大有文記、江北中馬路の趙大有祥記、倉橋の趙大有富記と江東後塘街の趙大有祥記支店など、どちらも菓子の名店になった。

団子は美味だけではなく、様々な寓意も含まれている。それぞれの用途に面白い名前を与えている。田植えには田植団子、収穫には稲刈り団子、商売には団子、結婚には竜鳳団子、出産満月には子孫団子などの名称を付けられる。

趙大有団子といえば、竜鳳団子が一番有名である。竜鳳団子は、外形が月のようで、面には竜と鳳の浮き彫り、吉祥と団欒の意を表す。その特徴は、皮が薄く餡子が多い。軽やかな甘み、すがすがしい香りがする。いくら食べても飽きることなく美味しい。

慈城のお餅

春節の際、寧波人は必ず正月用品を準備する。そのうち、なくてはならない食品はもちである。寧波のもちにおいて、慈城産のもちが最も有名で、慈城餅とも呼ばれる。

年糕(もち)について、その発音には、年々発展という意味が託されているから、寧波地域では、「餅餅年年高くなり、今年は更に去年より良い」という諺がある。また、餅は貧富に関係なく、大衆食品として、大変人気がある。

中国において、餅の種類が多い。そのうち、江南地域の餅が最も多様である。例えば、モクセイ餅、モクセイ餡餅、ラード餅、水磨き餅などある。

中国人は特に長江以南の地区では、春節あるいは冬と春の間、餅を食する風習がある。その歴史は遅くとも 2000 年前に遡り、戦国時代の呉越に起源し、呉国将軍の伍子胥によって発明されたと伝えられている。

紀元前514年、呉王の闔閭が伍子胥に王城を建造するようと命じた。王城が完成後、呉王闔閭が戦死、息子の夫差が後を継いだ。夫差が伍子胥の「斉と連合し越と戦い」の主張を受けず、北上して斉を攻めた。呉国が将来きっと越国に滅ぼされると心配した伍子胥は、家臣たちに「私が死んである後、国難に遭い、飢え死になったとき、城壁の下を掘って食べ物を探しなさい」と言い付けた。伍子胥が死んだ後、確かに越国は呉国の城を囲み、城内には食糧は無くなり、多くの人が飢え死になった。その時、家臣たちが伍子胥の言い聞かせた言葉を思い出し、城門の下を掘って食物を探し始めた。城門の下で、多量の白米を蒸して作った煉瓦を発見、それが硬くて食料にもなる。百姓がこの「レンガ」を食べて生き残った。

餅の発明と変遷について、多くの典籍から見られる。左食譜『食次』には、最初の餅の作り方は、「米を炊き、臼搗く」、その後、油揚げて砂糖をつけると食用できるという。碾き臼を使って、水をかけ、長形の粉餅になった。

慈城餅は数百年の歴史を持っている。そして材料の選び方や製作は優れている。慈城餅は、良品の粳米を材料に、洗浄後3~4日に水浸し、粉にしてから脱水、塊を蒸し、長形の餅を作る。このような方法で製作された餅は、玉のような白色、ぴかぴか光り、しなやかな粘り、いくら煮ても焦げなく、いくら保存しても腐らない性質を持つ。民間の餅作りには、印板で「元宝」、「如意」という文字を印刷し、「吉祥如意」、「大吉大利」という願いが込められている。また、「白い兎」、「白鳥」などの可愛い動物を作り、子供の興味を引き、多彩な餅作りをする。

慈城餅には、煮?炒め?揚げなど、いろいろな食べ方がある。砂糖炒め餅について、寧波には、「砂糖炒め、油炒め、口に泡のほど」という諺があり、なずな炒め餅について、「繊切りのなずな炒め餅、竈の菩薩も欲しい」という諺がある。そのほか、餅のスープも美味しい。餅は寧波人にとって、除夜に欠かせない食べ物の一つとなっている。昔は、片状に切って保存された。水で二日間浸って食用できるから、一年中には何時でも食べられる上等な餅である。慈城餅は伝統食品として、人々に広く好まれ、清代のある文人が次の詩で賛美している。

人の心がほとんど高く望み、形声で食品を作る。

年年高くなる意味を取り、豊作を祈るとの借用。

ラード団子

寧波人には正月にラード団子を食べる習慣がある。ラード団子には、団欒、如意の意味を持つ。海外の遊子が、「節句になれば普段よりいっそう故郷を懐かしむ」から、節句のとき必ず郷里のラード団子を食べ、団欒と故郷への思いを慰める。

団子は小正月団子のこと、元々は元宵節、つまり旧暦1月15日の上元の夜を指す。

団子を元宵団子と称したのは、隋朝に始まった。伝説では、西暦610年正月15 日の夜、隋煬帝が洛陽で舞台をかけて歌舞を催し、民と楽しみを同じくするとき、スープに砂糖を入れ、餡が入っていない団子で臣下と歌姫を招待したという。この日がちょうど元宵の夜のため、「元宵団子」と名付けられた。この人々に好まれた食品は寧波に伝わって、変わりつつあり、今日の寧波風の水磨き糕粉とラード餡の団子に辿り着いた。

八仙人の一人の呂洞賓が、三月の春に団子売りの老人に変身して、西湖の畔で呼び売りをしたとき、許仙が呂洞賓の団子を食べたら、うっかりして一粒の団子がつるつると西湖に落ちた。それを白蛇に飲み込まれ、白蛇は仙人になって、許仙と夫妻となったとされる。また、「アヘン戦争」後、寧波は「五口通商」の港とされ、多くの外国人が寧波を訪れ、彼らは寧波のラード団子を食べたら、その美味しさに興味を持つようになった。ところが、団子の餡はどのように入れたかは、彼らは幾ら考えても不思議であったという。

寧波団子は700百年以上の歴史を持っている。その製作は水磨きで糯米を液体にして作られたものだから、「吊漿団子」とも呼ばれる。制作方法は、上等な糯米を水に三日間浸し、糊状の液体まで磨き、袋に入れて吊るす。手にくっつかない程度から団子を作る。その団子は、皮が薄く、羊脂みたいな白さ、ぴかぴか光り、粘りがあってくっつかない。餡は品質の良いブタの脂を使い、筋と皮を取り、胡麻に砂糖を入れ、それをよくかき混ぜて出来上がった。餡を玉のように丸めて皮で包む。このラードの餡は、独特な美味しさがあって、脂っこくない。その食用法は、二回茹でた後食用できる。昔は、春節しか食べられなかったので、寧波では「新年の挨拶、お茶と瓜の実、ラード団子を口に」という歌が流行っていた。

寧波では、「缸鴨狗」という店の歴史が長い。「缸鴨狗」の実名は江阿狗である。初めは、寧波開明街で店を開き、人の名前を店名とした。看板の上に缸と鴨を描いたので、このユニークな思案は大勢の客を集めた。更に、制作方法が優れ、値段が安く、品質も良いため、多くの人に好まれた。店の名声も次第に広がり、商売繁盛になった。昔は、次のような歌が伝わっていた。「三時四時腹が減り過ぎ、ラード団子に缸鴨狗。銅の簪まで払って飽きず、衣服を脱いで質入とする。」。

寧波人には、外地へ商売進出の伝統がある。多くの寧波人が外地で店を開くことによって、寧波団子が各地へ伝わり、寧波団子の店も誕生した。現在、上海?杭州?南京?安慶などには、寧波団子の店がある。

青塊と麻糍

青塊と麻糍は、どちらも寧波地域の清明節の菓子である。

青塊はまた青団子とも呼ばれ、糯米の粉を少量の湯で煮込んで、よもぎの葉を細かく混ぜて、丸く滑らかでつやが出るまで揉む。小豆や大豆や胡麻を餡にして、団子を数分間蒸した後、ごま油を少し団子の表面に塗って食べることができる。青団子は、緑色で、甘くて美味しい。清明節には、祖先を祭るのに用いられる。

麻糍は、糯米とよもぎを磨き、その粉を板で圧し、花粉をかけて、加熱してから食用できる。その団子は、炒めても、焙っても、蒸しても好きな方法で調理できる。砂糖を掛ければ、もっと美味しい。麻糍は、主に祖先祭祀と墓参りの後の軽食とする。麻糍について、次のような物語が言い伝えられている。最初の人類は、誰でも10節の尾を持ち、その尾が9節まで黄色く変わったら、人は死ぬと言われている。ある日、自分の尾が9 節まで黄色くなっているのを見た人がいて、もうすぐ死ぬだろうと思って、彼は山の中で穴を掘り、そこに潜り込んである。彼は、麻糍の団子で布団を作り、花粉を掛けて、洞窟の中で暮していた。腹が減ったら団子を食べると、以外に長生きで百歳まで生きていた。人々に、長寿の秘訣は団子を食べたのを知られ、相次いで老人の団子を食わせた。それ以来、墓参りのとき、必ず麻糍の団子を分けて食べるようになったという。

砂糖鼈

寧波料理の中で、砂糖鼈は最も有名である。すっぽんの氷砂糖料理は「独占鼈頭」とも呼ばれ、寧波十大料理の一つで、その起源は甬江の状元楼に始まったものである。

100年前、寧波江北には、一軒の酒屋があった。店の料理はすっぽんの氷砂糖が一番人気を呼んだそうである。料理の味は、柔らかく、香りに包まれ、甘さと塩辛い味がするから、独特の旨みを持つ。

ある日、二人の外地の挙人(科挙試験の郷試に合格した人)が上京の途中、店に来た。二人は、川の景色を楽しみながら、店で飲酒の約束をした。「いらっしゃいませ、何を召し上がりたいでしょうか」と店員が尋ねた。

二人とも金持ちの子供であるから、「有名な料理を全部出してくれ」と言った。

店員は続々と料理を出し、二人は最後のすっぽんの氷砂糖料理を見たら、鼈の頭が上に上げ、芳しい香りを漂わす。味わってみると、糯米の旨さを感じ、絶品料理だなと気に入った。「何の料理ですか」と店長に聴いた。

店長は二人の受験用の服装などを見て、とっさに妙案が浮かび、吉兆を送るように掛詞で、「お客様、この料理は独占鼈頭ですよ」と答えた。二人の挙人が聞いたら、「素晴らしい」と言い続け、喜んで去った。

偶然なことに、その年の秋には、二人とも状元に受かった。二人は誇りを持って、錦の官服を着て故郷へ帰る途中、再度この甬江の料理屋の「独占鼈頭」を食べに来た。この料理の御陰で、元気になり、試験に合格したという。そして、「氷砂糖の鼈」料理をもう一品作ってあげ、筆?墨?紙?硯などの文房具を持ってきて、状元に店の看板を書いてもらった。

興奮の最中、状元は遠慮せずに、「状元楼」という三つの文字を大きく書いた。その後、状元楼は浙江省東部地域で有名になった。状元楼の看板料理である砂糖鼈も世界に名を馳せた。以降、上海も状元楼を二軒開いた。店名は、「甬江状元楼」と「四明状元楼」である。すべては砂糖鼈の看板料理で名が知られている。

砂糖鼈料理は、鼈を主要原料とし、砂糖などを調味料とする。料理の色合いは黄色く、いろいろな味がする。調理のとき、くずあんと揚げ油で鼈を炒めたものであるから、暖かくて美味しい。そして蛋白質?沃素?鉄?ビタミン Bなどの栄養が多く含まれる。

甲魚(すっぽん)は、また「団魚」、「元魚」とも呼ばれ、甘くて塩辛い味がする。薬用の価値がある。鼈料理は、養陰清熱、軟堅散結の効能があり、長患いのマラリア、小児の脱肛、子宮病、肝臓硬変などの疾病を治療することができる。

雪菜大黄魚

雪菜大黄魚(高菜といしもち漬物の煮込んであるスープ)とは、別名は「大湯黄魚」(高菜といしもちのスープ)で、寧波の有名な郷土料理である。雪菜大黄魚料理の製作と材料の選びは、よく工夫したものである。まず、新鮮ないしもちを選び、清浄後、魚の背中を少し切り裂く。それに、薄く切った高菜の漬物と冬の竹の子を用意する。それから、いしもちの両側を油で炒め、黄色く変色したら、もち米の醸造酒を入れ、水?生姜?高菜?竹の子?塩?味の素などの調味料とともに数分間煮て、汁が白く変わったら、葱の微塵切りを掛けて食用できる。

大黄魚(いしもち)は、肉が柔らかく骨が少ない。古来より「瑣砕金鱗軟玉膏」の美称がある。高菜漬物は質が脆くて柔らかい、美味しくて特別な香りがする。この二つの材料を主としたいしもちと高菜漬物の煮込んだスープは、魚の肉が柔らかく、高菜の香りが漂う。また、雪菜大黄魚は、美味と栄養豊富のため、多くの顧客に好まれる。

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